木材の種類と特徴|
木の器の使い方とお手入れ方法
「これはどんな木を使われていますか?」
「木の器の取り扱いはどうしたら良いですか?」
木の器を手に取るお客さまから、こうした質問をいただくことはとても多いです。
木の器はオイル仕上げが主流ですが、無垢のままや耐水加工を施したものなど、用途に合わせて仕上げを工夫する作り手も少なくありません。
木の種類や選び方、器のお手入れまでを紹介します。
木材の種類はどのくらいあるか?
木の器と一口に言っても、お椀やプレート、カトラリーなどさまざまあります。
また、私たちに馴染みのある木がそのまま器になっているかというと、すべてのすべての木が器に適しているわけではありません。
まずはどんな木の種類が器に使うことが多いのかを紹介していきます。お店ではなるべき材料を表記するようにしていますが、わかりにくい場合はどうぞお声かけくださいね。
桜(サクラ)/チェリー
日本人には馴染み深い桜の木です。
器には山桜(ヤマザクラ)が使われることが多く、赤みのある茶色をしています。
木目は穏やかで、食卓では「これぞ木の器」というオーラを放ちます。木で器を作る際は、材料をどれだけ無駄にしないかも重要です。
特にサクラには大きな材料もあり、サイズを活かしてお盆やトースト皿に仕上げ、木端(コッパ)と呼ばれる残りや端っこの小さな材料からはカトラリーが生まれます。
また、ヤマザクラと同じく器の中でもよく使われる材料にチェリーがあります。
これは産地や品種が異なる桜の一種です。
胡桃(クルミ)/ウォルナット
クルミのなかでも器に使われるのはオニグルミが一般的で、漢字で「鬼胡桃」と書き、ご存じの通り、鬼のように硬くゴツゴツした実がなる木です。
産地は日本では東北や寒い地域のもの、海外からのものもあります。
木目は比較的落ち着いており、他の木種に比べると軽めの(とはいえ、木の重さは木種よりも個体差の影響が大きい)印象です。
赤みの少ない木肌をしており「クルミ」という馴染み深さから選ばれやすい材料です。
ブラックウォルナット
同じくるみでも木肌が黒っぽいブラックウォルナットという材料があります。
塗装ではなく、もともと赤みを帯びたこげ茶色の木肌をしています。
高級感があり、家具や建材・内装でとても人気のある材料のため、たくさんの器を見る機会はなかなかありません。
また、大きな材料は手に入りにくいのか、カトラリーや小さめのアイテムとして作られることが多い印象です。
楢(ナラ)/オーク
ナラはブナ科の材料でコナラやミズナラという木種が有名ですが、クヌギもナラの一種に含まれます。
北海道で大きなミズナラの木を扱う職人さんとの出会いがあり、大阪のお店のカウンターに使わせてもらいました。
クリーム色の優しい木肌をしています。また、
ナラは硬い木としても有名で仏像などにも使われるそうです。
美しい木目や大きな材料は家具に使われることが多く、器よりもお盆やカッティングボードとして並ぶことが多い材料です。
オークは産地や品種による呼び名の違いです。
栗(クリ)
骨董屋さんで大きなお盆を見かけたことはありませんか?
クリでできていることが多いようです。
クリはタンニンが多く含まれるため、防腐効果があり、耐久性が強いと言われています。
木肌は白っぽいですが、道具として長く使われた栗は艶をまとい、褐色になっているものもあります。
家具や盆など大きく仕上げるものが中心で、小さくてもプレートまでという印象です。
朴(ホオ)
ホオの木は、桜やくるみに比べたらあまり聞きなれない方も多いでしょう。
見た目も白・灰色・薄いグリーンのグラデーションのような色で、一般的に想像する「木」とは少しかけ離れたものです。ただ、ホオの木の優秀さはその抗菌力にあり、まな板として使うとカビが発生しにくいと重宝されています。
柔軟で加工がしやすいため、プレートとしてお店に並ぶこともあります。
檜(ヒノキ)
ここまでは広葉樹が中心でしたが、ここからは針葉樹を紹介します。
檜風呂に浸かったことはありますか?香りが豊かでリラックス効果も期待できます。
抗菌作用があり、食器よりも道具として蒸篭・まな板・寿司桶などに使われることが多いです。
熱い蒸気で食材を蒸す、木材にとっては過酷な環境ともいえますが、曲げたり圧縮強度に強いヒノキだからこその役割を担っています。
杉(スギ)
檜と同じ針葉樹で、日本に最も多く分布する木で、住宅の柱・構造材として欠かせない材料です。
器としての用途よりもお櫃・お弁当箱に使われることが多いです。タンニンが多く含まれるため、ご飯を長く美味しく保つことができます。
今ではホカホカご飯が当たり前になりましたが、昔は汁気で暖を取り、お櫃からよそったご飯はよく噛んで甘みを味わうものだったそう。
木の器にはどんな木材を選ぶべきか?
ここまで木種別にそれぞれの特徴を紹介してきましたが、「どんな木材を使った器を選べば良いの?」という質問を多くいただきます。
結論として、器や道具として作られた状態であれば、何を選んでも大丈夫です。木種により細かな違いはありますが、機能として大きく異なることはありません。
作り手たちが十分に吟味した木で適した器を作っているため、安心してお使いください。
ご自身の好みの木目や色の違いで選んでいただいて結構です。
ただし、器の場合は仕上げによる取り扱いの違いがあります。
これはこの後説明していきます。
木の器の仕上げとお手入れ方法
木の器の仕上げの種類とそのお手入れ方法の紹介をします。
使い方やライフスタイルに合わせて選んでみると良いでしょう。
オイル・蜜蝋仕上げ
プレート・ボウル・カトラリーなどに多いのがオイル仕上げです。
使われるオイルは作り手によって異なりますが、荏胡麻(エゴマ)・くるみ油・オリーブ油など食用油から家具にも使える蜜蝋(口に入っても大丈夫なもの)を使います。
オイルや蜜蝋は、木の特徴を最大限に活かしながらも汚れが付きにくく、美しく保てる仕上げで、木の器の一般的な仕上げ方法といえるでしょう。
オイル・蜜蝋仕上げの器|お手入れ方法
①器に汚れが残っていないか確認してください
②綺麗な布にオイルを付けて器に染み込ませます
③オイルがベタベタしない程度に乾燥させる
器を使用するたびに水やぬるま湯で洗浄が必要になるため、どうしても塗装は薄くなります。
オイルが取れたからといって、使用にあたって大きな問題はありません。
大きな面積にオイル塗装をする場合、刷毛の使用も選択肢ですが、オイルが厚く付きすぎることもあります。
綺麗な布にオイルを染み込ませてお皿に塗ってあげる程度だと気軽にメンテナンスが行えます。
拭き漆
拭き漆とは、木の器やカトラリーに漆を染み込ませることをいいます。
表面上の塗装というより、染み込ませる・吸い込ませるという表現が近いでしょう。
理由は、木はある程度漆を吸ってしまうからです。
こうすることで、防水以外にも木が歪みにくくなる効果も期待できます。
漆は漆のお椀に代表されるように、水に強い素材です。
天然素材ですし、使う側としても安心して使えるメリットがあります。
アイテムや使い方にもよりますが、拭き漆仕上げも永久的に効果が持続するものではなく、「使っていて生地(木の色)が見えてきたかも」「ガサガサが気になる」といった場合は作り手にメンテナンスを依頼することもできます。
その場合はお問い合わせください。
漆塗りの器の取扱い・お手入れについては別途説明いたします。
無垢
無垢とは何も塗装を施さないそのままの状態です。
器には少ないですが、お盆や家具では見かける仕上げ方法です。
汚れが付かないように使うには注意が必要となりますが、長年使い込んだ家具を見せていただくと、木の本来の美しさや使い込んだ表情に惚れ惚れします。
オイルなどの塗装をしたとしても、絶対に汚れが付かないか?というとそうとは限りません。
また、汚れが付きやすいのは使い始めに多いのです。
この点から「無垢でも良いのかもしれない」と選ぶ方もいらっしゃいます。
ちなみに、米糠を晒に包んで擦り付けるとピカピカになるのだそう。
ウレタン・プレポリマー・耐水塗装仕上げ
耐水系の仕上げは年々新しいものが加わります。
たとえば、プレポリマーはウレタンの一種ですが学校給食でも安全に使える基準を満たしているものです。
また、ガラス塗装という方法はガラス質のコーティングなので、防水効果を維持しながらも木の表情が変わらない特徴を持っています。
このような塗装の場合、ご自身でのメンテナンスは不要です。
使い終わったら中性洗剤で洗って水気を拭き取ってください。
ただし、あくまで塗装なので、長時間水に浸すなどの洗い方はしないように注意しましょう。
曲げわっぱのお弁当箱にもプレポリマーを使っているものがあります。
お弁当箱は使ってすぐに洗えるなら塗装しなくても良いですが、お弁当箱という用途上、汚れがついたまま放置すると黒ずんだり汚れの原因になるためです。
ただ、塗装をしたお弁当箱でもご飯がおいしく、保存状態も良好に保てるから採用したのだそう。
作り手の現場でも日々試行錯誤が行われており、私たちの安心へとつながっているのです。
どんな料理に使う?木の器はトーストから始めよう
「木の器をどんな料理に使ったら良いですか」これもよく聞かれる質問です。
基本的にどんな料理に使っても問題ありませんが、汚れやシミとどう付き合っていくのかの判断は難しいものがあります。
そこでおすすめなのは、トーストやおにぎりで使い始める方法です。
木の特徴に「吸湿性に優れている」点があり、トーストの蒸気を吸ってくれるので、カリッとした状態が長続きします。おいしいですよ。
木の器は、汚れが付きにくい状態や仕上げになっているか、使用後の洗い方や保管方法などにより、器への影響が異なります。
特に使い始めは汚れが付きやすく、気になりやすいともいえます。最初はトーストで使っていくうちに、だんだん木の器の使い方にも慣れて、どんな料理を盛り付けても安心して使えるようになります。
コホロのスタッフはカレーやパスタにも使っていますので、どんな料理に使うのかに困ったらぜひご相談ください。