川口武亮さんと照井壮さん、同い年のお二人は佐賀の有田で生まれ育ち、現在も有田という土地から全く異なる表現で作品を発表されています。今回東京と大阪の実店舗では同じ時期にそれぞれ作品展をして頂く機会に恵まれました。オンラインショップでは器つくりからお互いのことまで二人に注目した質問してみました。
<ご自身について>
ー 器をつくる道に進もうと考え始めた時期 川口さん 父や祖父も焼きものに関わる職業で好きなことをやっていいと言われていました。有田の外に出てみると、有田が独特な環境だったことがわかり焼きものの道に進んだのは22歳から。有田で学校に通い始めました。 照井さん 学生時代に鯉江良二のオブジェに出会い、オブジェ作家に憧れて鯉江工房にスタッフとして入ったのですが、その後、彼が作る器や書の作品にも興味が移っていきました。
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ー 有田という地で生まれ育ったことは少なからず作品に影響しているか 川口さん はい。有田は磁器の発祥の地で、磁器に囲まれて生活し、学校でも磁器を学んでいました。磁器の白に見慣れたなかで、土ものの作家との出会いがあり、同じ白でも陶器のもつ柔らかさやはかなさ、懐かしさに惹かれるところがあります。 照井さん 現代の有田焼に興味を持てなかったです。それは今でも変わりませんが、しかしながら、せっかく有田に生まれたので、自分の作品はあえて「有田焼に使われる素材だけを使って作ろうか」と、ある意味で影響があり、楽しんでいます。 |
ー 作品を作るうえで大切にしていること 照井さん 職人的にはならないように仕事をしています。一度に同じ仕事をし過ぎないとか。ひたすら同じ形をロクロ引きするのではなく、午前ロクロ、午後タタラ、夕方窯詰めとか。 |
ー 伝統的な手法を用いながら現代の生活に合うよう意識していること 川口さん この時代に生きていて良いと思うもの、自分が良いと思う感覚を大切にしています。 照井さん 人からのリクエストをなるべく聞いて、作ったことがないものでもチャレンジする。自然に時代とマッチしていく気がします。
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ー インプットや気分転換にしていること 川口さん 人に会うこと、です。 照井さん 映画鑑賞です。個展で外に出たときは時間を作って必ず映画館に行くようにしています。 |
ー ご自分の代表的な作品 川口さん 陶芸を始めたころからずっと作っている粉引の器です。 照井さん 「熊、のようなもの」というオブジェ作品を代表作にしたいです。
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ー 今後目指していること 川口さん あまり何も決めていないので、どうなっていくのかが楽しみです。10年前は今の姿を想像していなかった。これからも、時代に流されないものを作りたいけど、その時その時感じたことを仕事にしていきたいです。あと今年からお茶を習い始めて、今興味があるのは古唐津など、唐津の器。日常の器と共に、お碗や茶道具、懐石の器も作っていきたいと思います。 照井さん ひとつの個展を見てもらったときに一本の映画を観たような感覚になるような個展をしてみたい。 |
ー 影響を受けた作品や作家、音楽など 川口さん 古いもの。李朝の粉引のものなどを手元に置いて使っています。 照井さん 住み込みで修業をさせてもらった鯉江良二先生と李康孝先生には多大な影響を受けていると思いますが、器作家としては中島勝乃利さんの器が好きです。 |
ー 好きな美術館 川口さん 民藝館です。民藝の精神性 清々しさ、健康さみたいなものを感じます。 照井さん 目黒の庭園美術館、品川の原美術館が建物自体の魅力も含めて好きな展覧会が記憶に残っています。 |
ー 有田の見てほしい、知ってほしいこと 川口さん 古い街並み、トンバイ塀、陶山神社 照井さん 九州陶磁文化館が所蔵、展示している柴田コレクションには有田最初期の器が沢山あって、それらにはまだ技術的に完成されていないゆがみや不純物を持った、かつての美しい有田焼があります。 |
<お互いについて>
ー 二人でいるときはどのような話をしているか 川口さん 作品の話しはあまりせず、壮くんは映画が好きなので映画の話などよくします。 照井さん 同じ有田にいても最近では年に一度の忘年会でしか会っていなくてそのときも二人っきりではなく、他の陶芸家仲間など大勢で会っています。しかも、お互いのヨメさんがおしゃべりなので話題は任せています。 |
ー すごいなと思うところ、好きなところ 川口さん 自分の世界観を持っているところ。作品にもキャラクターがあり、作品も人そのものと思っている。古くからある有田の町ですが、壮くんに会うといつも新鮮に感じます。 照井さん 僕が圧倒的にインドア派なのに対して武亮くんは外に出て行くイメージがあります。美味しいお店に行っては常に器と食べ物の関係を考えているようで本当に勉強熱心だと思います。 |