2017.10.8
学生時代はKOHORO二子玉川の隣町にある多摩美術大学に通い、
今も近くにお住まいの伊藤満さんにとって二子玉川はなじみの街だそう。
お店にもちょくちょく手持ちで納品してくださるので、
1年で1番お会いしている作家さんかもしれないです。
先日伊藤さんの工房でイタリアで過ごしたお話や器つくりのことを聞かせて頂きました。
(K-KOHORO I-伊藤満)
〈1〉イタリアのおはなし
伊藤さんといえばイタリア。
神奈川の陶工房を経た後、2005年から1年ほどイタリアの工房で修行されていました。
南を連想させる色彩豊かな作品をKOHOROの個展でも数多く見せて頂きました。
今でも2年に1回、夏頃に2ヶ月ほど滞在されています。
K 「今年の夏もイタリアへ行かれていたそうですね。もう何度目になりますか?」
I 「7~8回くらい。ヴェネツィアビエンナーレの時期に合わせて行きます。
ヴェネツィアに1週間、後は通っていた工房があったペルージャで過ごすのが定番です。」
K 「どこかアパルトマンを借りて?」
I 「最近は友人のマルコ夫婦の家に滞在しています。」
K 「お2人に会えるのも楽しみの1つなんですね、滞在中はどんなことをしてるんですか?」
I 「いろいろ吸収する期間にしています。路上でいろいろな年代の女性にピアスを着けてもらい、
写真を撮らせてもらいました。いつか写真を集めて面白いものが作りたいと思っています。」
作業場外の窯の中にはイタリアで作られたアクセサリーのパーツが出来上がっていました。
こちらは淀屋橋の個展に並びます。
▲焼き終わったばかりで顔を近づけるとまだ温かい。
〈2〉器つくりについて
伊藤さんが器つくりを仕事にするまでのお話を聞かせて頂きました。
K 「美大ではどんな作品をつくっていましたか?」
I 「絵を描いてました。」
良かったらどうぞ、と最近の絵を見せてもらいました。
そうだ面白いものがあるよ!と見せてもらった学生の頃から書きためている
分厚いアイデアノートには、最近の作品と思われるものも発見。
K 「どうして器つくりの道に進まれたのですか?」
I 「自然の素材で、ものつくりをしたいなと漠然と考えるようになりました。
縁あって陶芸工房で働くことになり、今に至っています。」
▲石膏の型
▲素焼きされたもの、釉薬掛けされたもの
▲ねこのはし置き
轆轤の前に菊練りも見せて頂きました。
器作りがはじまります。
K 「土はどんなものを使っていますか?」
I 「黒御影と黒泥を混ぜてます。石が少し入っていたほうが焼いた時の歪みが少なく済むんです。」
▲きめ細かい黒御影(左)と粗い黒泥(右)
KOHOROで定番の一輪挿し。これは轆轤で作られています。
三角定規や刷毛、木の棒を使って形を作っていきます。
▲肩が丸くなだらかなもの、角ばっているもの
いつもいろいろ形のものを作ってきてくれます。
新作のオーバル皿は型を使って形を作ります。
▲はじめ、手でたたいて平らにしていきます。
▲力の入れ具合を均一に、前後一定方向に伸ばします。
▲型に伸ばした土を被せ、型に沿って抑えつけます。
▲ふちの余分な土を丁寧に切り取っていきます。
▲ひっくり反して、型からするりと外します。
続いてお皿に浮かぶ模様を作ります。
▲細い土を溝にあわせて置き、馴染ませます。
ふんわりとした白に丸い模様が浮かび上がっています。
工房はご実家と同じ敷地で、お話を伺っている最中も
お父様のフルートが聴こえてくるのどかな雰囲気。
伊藤さんの人柄や作られるものの背景が少し垣間見られた気がします。
〈3〉今展の作品について
定番でいつも作って頂くのは猫の箸置き、白と青の一輪挿し、パスタ皿などですが
新しい試みについてお聞きしました。
K 「una finestra veneziana 2017(あるヴェネツィアの窓)とla porta di "k"(”K"の扉)について聞かせて下さい」
I 「ヴェネツィアの丸いステンドグラスの窓とKOHORO二子玉川の四角い扉を模様にした
シリーズです。白がメインの展示になりますが、白にすこし自分らしさを加えました」
K 「なぜ "扉"をテーマに?」
I 「"扉"って中の空間と外の空間をつないだり、開いたり・・・明るいイメージが今回の個展にいいなと思いました」
▲una finestra veneziana 2017(あるヴェネツィアの窓)
▲la porta di "k"(”K"の扉)
これまでにも、ご自身が和物と思うものには「満」、
洋物と思うものには「m」の印と分けていたり、面白い発想が魅力な伊藤さん。
quaranta(イタリア語で40)シリーズという作品の構想があるそうです。
K 「quaranta(イタリア語で40)1/40シリーズも楽しみです。今後どのような展開になりますか?」
I 「定番の器を40個決めて、裏に数字のサインを入れて今後シリーズ化していきます。」
工房にはオブジェや絵が所々に置かれていて、
ここから何か物語りが始まりそうな空間でした。
K 「今回は置き時計を作って頂けるとお聞きしました。」
I 「絵やランプシェード、アクセサリーも持っていきますよ!」
繊細な模様が施された素焼き待ちのピアスやブローチ。
▲una finestra veneziana 2017 のピアス!
12月にはKOHOROお向かいの「SHED」にて期間限定「伊藤満SHOP」を開催します。
美大卒業の伊藤さんならではのデザインのものやオブジェ、絵なども器と一緒に並びます。
K 「最後に、どんなものをこれから作っていきたいですか?」
I 「毎日の生活、食卓が楽しくなるような器。
自分の器から焼き物や手づくりの器に興味を持ってもらえたら、なおうれしいです。」
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1971年 東京都生まれ
多摩美術大学卒業
神奈川、イタリアの陶工房を経て
現在東京都にて制作
伊藤満さんの作品はこちらからご覧いただけます。
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