「水垣千悦展」 2023.9.2(土)-11(月)

9月2日より二子玉川では水垣千悦展を開催しています。
二子玉川のお店では2年半ぶりの開催。
今年に入ってから取り組まれている黒象嵌をはじめ、染付、白磁、三島、鉄釉など水垣さんの世界観が今回も店内に広がっています。

【水垣千悦展 オンラインショップ】
掲載期間:2023.9.9(土)19:00~
水垣さんの作品はこちら≫



大分県の自然豊かな場所で暮らし、制作をされる水垣さん。
日常や自身の中にある遊び心が器の中にも映し出されています。
新しい作品や名前の由来、ものづくりに取り組む姿勢についてなど、インタビュー形式で伺ったお話を交えながらご紹介していきます。(M:水垣さん K:コホロ) 




K:「最近取り組まれているという黒象嵌の作品。作り始めたきっかけや気に入っている点を教えてください。」

M:「今までも高麗写しの鳥の象嵌鉢などで部分的に使っていたり、李朝時代の白磁に黒象嵌で文字をいれたものがあるのを知っていたので、いつかこれで文様を入れてみたいとぼんやり思っていたのですが、広範囲に象嵌するとなぜか傷ができてしまってあきらめていました。
春先にたまたま手元にあった材料を合わせてみたらうまくいったのがきっかけです。深く考えずに目の前にあったものをザバッと合わせたので次もうまく作れるかちょっとわかりません。版画と一緒で、削り出すという一手間が加わることにより、手で書いた時とは違う線の表情になるのが気に入っています。」

自然体にものづくりに向かう水垣さんの姿が目に浮かぶようです。
染付で描かれた生きものや動植物はゆるやかな躍動感が印象的ですが、黒象嵌は削り出すことによってさらに力強さや迫力が増し、生き生きとした表情が伝わってきます。



K:「今展の作品はほとんどが薪窯とのことですが、薪窯ならではの良さや難しさはありますか?」

M:「去年から薪窯を使っているのですが、薪と併用できると聞いていた灯油バーナーがうまく使いこなせず、最初から薪で焼くようになりました。燃料が薪ということで濡れたり、台風が来たらもう終わり。夏はとても暑く天気に左右されることが大変でした。
大変なこともある一方、灰がかかって釉薬と混ざったり、炎の雰囲気で今まで見たことがない色ができたり、想像していなかったものが目の前に現れるので気に入っています。また自分の感覚で薪を投げて温度を上げていくのも楽しいです。」

薪窯になったことで、艶やマット、異なる質感が生まれたり、炎を受けて器の表情に深みが出てより一層見応えを感じます。
薪を投げて温度の調節をする水垣さんはきっと嬉しそうな顔をして、心から作ることを楽しんでいるのだと思いました。



去年淀屋橋での個展のときに大きな鉢を作ってみたいといっていた水垣さん。
今回は迫力のある黒象嵌や鉄釉の作品が届けてくださいました。
「フルーツをはじめ、食べ物以外のでもぽいぽい入れていくのに重宝するので、大鉢を使う人が増えたらいいな」と。
薪の炎によってひとつの器のなかにも様々な色や景色が、料理や花、くだものや野菜などの表情も引き立ててくれそうです。



△グラノラ碗色々、直筆のコメントからもユーモアが感じられます。

K:「今回届いたグラノラ碗、お茶漬け碗、去年の夏に作って下さったフルーツポンチ碗など、食べ物の名前の作品が印象的です。普段水垣さんがよく食べるものが由来になっているのですか?」

M:「展示前で作業が煮つまってくると、とりあえずササっと食べられるものを食べて作業に戻る、という状態が続くので、グラノーラと海鮮茶漬けはとても良いです。納品書を書くときはこれさえ終わればゆっくり眠れるというヨレヨレの状態なので、あとでもっと適切な名前が思いつくはずと適当に書いたものが良い名前をつけずにそのままになっています。」



K:「今展でたくさん作って下さった花器。水垣さんの花器はとても生けやすいですね。なにか参考にされているのでしょうか。」

M:「私は昔ながらの工芸の世界に生きているので、花器も昔ながらの形に則っています。斬新さは求めていなくて、なぜこの形が何百年も作り続けられてきたのかということを考えるのが好きです。何百年も同じ形ではあるけれど、時代や土地によって強調する部分がかわったり、作り手の癖が見え隠れするのが好きです。自分もその流れの中にいたいと思います。
ぼんやりとした形にならないよう、丸い壺なら丸にするとか、梅瓶の肩をどんな風にして腰の辺りはどうするか程度の簡単なデッサンをしてから作っています。

古く伝わるかたちを倣い、作り手やその時代のことを思いながら作る水垣さんの花器は、時代や暮らしを超えて現代の暮らしのなかにもあり続けてくれるような存在感を放ちます。
古いものに敬意をはらいながら、水垣さんならではの視点や感性も加わることで新しいものに出合うような面白さも感じました。



一見静かな佇まいな白磁や鉄釉、刷毛目の器。
お菓子や料理を盛り付けてみると載せるものをぐっと引き立たせ、器の懐の深さを感じられます。異なる技法の作品の組み合わせも自然で、食卓に奥行きが生まれるようです。

手回し轆轤で制作される水垣さんは、轆轤の回転が遅って止まりそうになると、棒を使って回しながら作ることで、微妙な歪みや不均一さが出てくるのだそう。
ぴしっとしすぎない、どこかふっと抜けるようなかたちが、手に取ったときに心地よく使うたびに愛着が湧いてきます。


李朝時代の器に心を奪われて陶芸を始めた水垣さん。
「もう何をどうやってもかなわないというものに少しでも近づきたい!」という想いを原動力にしながら日々制作を続けています。
作品からも水垣さんの大切にしていることが伝わってきます。
器の先にいる使う人の幸せを願う優しさが感じられ、食卓に並ぶとふと幸せな気持ちにさせてくれる水垣さんの作品。
お店での会期は11日(月)まで。会期中オンラインショップの開催も予定しています。
ぜひ一つひとつお手に取ってじっくりとお楽しみください。


水垣さん、たくさんの作品と、質問への丁寧なお返事ありがとうございました!

------------------------------------



9/2(土)からKOHORO二子玉川では水垣千悦展が始まります。
李朝などの古い器に惹かれ、そこから汲み取るものと自由で伸びやかな表現が重なる水垣さんの作品。
大分県の自然豊かな場所で暮らし、日常や自身の中にある遊び心が器の中にも映し出されています。


福の字や寿。縁起の良いとされる生きものや模様。
いい具合に力の抜けた雰囲気から感じられる大らかさや、 器の先にいる使う人の幸せを願う優しさ、水垣さんの大切にしていることが作品からも感じられ、 食卓に並ぶ水垣さんの器はふと幸せな気持ちさせてくれます。

今年に入られてから取り組む黒象嵌は、絵付の雰囲気を残しながらも落ち着きのある表情に。
他にも様々な作品を届けて下さる予定です。
それぞれの表情を楽しみにどうぞご来店ください。

2022年コホロ淀屋橋での開催の様子はこちら≫

水垣千悦展
2023.9.2(土) -11(月)
11:00-19:00
KOHORO二子玉川