「水垣千悦展」2022.7.16(土) - 25(月)

7月16日(土)より淀屋橋にて水垣千悦展が始まりました。
淀屋橋での開催は約5年ぶり。25日(月)まで開催しています。
夏の暑さが吹き飛ぶように涼やかな空気を与えてくれる作品が店内に並びました。


水垣さんは大分県にて白磁や三島、染付などを作陶されています。
今回の企画展では、染付を中心に届けてくださいました。
二つとない作品で一点ものばかり。
やわらかなタッチと今にも動きだしそうな躍動感やユーモラス溢れる動植物の染付は、自然と笑顔がこぼれ見る人を惹きつける魅力があります。
李朝や古いもの、昔話がお好きだという水垣さんに、今回その魅力についてや作品に対する向き合い方などについてもお伺いしました。(M:水垣さん K:コホロ) 

K:季朝や古いもの、昔話を好きになったきっかけは。またそこに惹きつけられる魅了とは何ですか。

 M:昔話自体は小さい頃に好きだったのですが、今は地域や家庭独特の言い伝えを聞くのが好きです。ここ数年は、土居淑子という中国の古代史を研究していた人の資料を読んでいて、西洋と東洋の文明が出会った頃に作られた遺跡から発掘された龍や羽の生えた羽人、生命の樹の画像石など現在に伝わる文様の源流を垣間見るのが楽しいです。祖父の家に日本刀や兜があったので、小さい頃からなんとなく古いものに魅かれてはいたのですが、李朝に出会ったのはたまたま入った東京の李白という喫茶店で白磁の壺を見た時からです。もう仕事を辞めてこの道でいいやと思わせる魅力がありました。わびさびを体現しているものを初めて見た気がしたし、とても高潔だったり包容力があったり、まぁいいかという感じがあったりとかなわないなというのが、多分惹きつけられ続けている理由のような気がします。

仕事を辞めてもいいと思えるほど、惹きつけられる作品との出合いが今の水垣さんの作風を作り出しているのですね。
K:どの作品も二つとない作品で、見る人を楽しませてくれる作品ばかりです。躍動感のある動植物たちは、どのようにイメージして描かれていらっしゃるのですか。ダンスをしているような猫もとても可愛らしいです。

M:染付の絵柄はほとんど昔の文様の写しなので、長い年月を経て、職人が絵描き唄みたいなノリでササッと何百個と描けるように単純化されているのが躍動感に見えるのかもしれないです。骨董店で、同じ柄なのに描いた人が明らかに違うものを見つけたりするのが好きなのでその末流に入れたらいいなと願っています。

変な猫はちょっとカンフーのポーズにしてあります。

カンフー猫とは!ほろりと心をほぐしてくれる作品は、水垣さんにしか表現できないですね。凛と佇むかっこよさや憎めないような表情、こんなところにもという発見など骨董品のように見る楽しみを与えてくれます。
来店されたお客様も笑顔が絶えず、その空間を作り出す水垣さんの力にも脱帽します。

染付の作品について意味もお伺いしてみました。
K:染付の作品で描かれている動植物の由来を教えていただきたいです。

 ウサギは李朝の文様にでてくるもので、月の中で不老長寿の薬を石の臼でついているものになります。日本のウサギは月の中で呑気にお餅をついていますが、中国や朝鮮のウサギはせっせと薬を。中国発祥の寓話が、海を渡って日本に伝わってくる間のどこでどうお餅にかわったのか想像するのが好きです。

獅子犬他は中国の明時代の祥瑞文様の写しで、この祥瑞文様が昔の伊万里でも写されて日本にも土着化しているのでその末流にそっと私も。

犬は、シュッとしている方はうちの愛犬フジ子をさりげなく。
火の玉の宝珠は、この世のものではない龍とかあやしのものが出るときに、一緒に描かれるお約束みたいなものです。昔の器などで、これはなんだろうってよくわからない生き物が描かれているときにこの宝珠やあやしげな太陽や雲が一緒に描かれていると、この世のものではない空想上のものねということになります。

K:こちらの植物は何という植物なのでしょうか。

M:秋草文様と称されているものです。この場合は蘭ですが、菊とかもまとめて秋草のくくりに入っていたりします。秋草は漢詩の題材や墨絵にもよく出てくるもので、古くから文士の憧れを投影したものとなっています。
墨絵で崖の上に一輪咲く蘭の花、という構図があり群れずに一人清さを貫く美しさを表していたりします。風鈴の音を聞いて涼しさを連想するみたいに、今では地味な表現として見過ごされがちですが、私は文様としてとても好きな柄になります。

「一人清さを貫く美しさ」しっかりと根強く立っているようで力強くとてもかっこいい姿ですね。
作品に対する向き合い方についてもお伺いしました。

K:作られる上で大切にされていること、また作る上で水垣さんが一番楽しいと思われることは何ですか。

M:ゴッホの日記に出てくる言葉なのですが〝それはきらびやかに着飾った《エレーヌ》の絵を見せた画家に、アベレスが放った言葉を想い出させる。彼は軽蔑をこめて言ったのだ。「美しく描けなかったので贅沢に描いたのですね」"と 〝われわれは間抜けでも希望を捨てないのがとりえだというのがあって、私にとって作るときにとても大切なことだなと。
楽しいのは、ロクロがくるくる回っているとか(手回しロクロなので結局自分で回しているのだけれど、なぜか楽しくなります)窯の中で器の釉薬が溶けてピカピカしているのを見るときに。

K:これから作っていきたいものややってみたいことはございますか。

M:かっこいい飴釉のものを作りたいです。それと大鉢。フルーツとか食べ物以外の物でもぽいぽい入れていくのに重宝するので、大鉢を使う人が増えたらいいなと。

次々にやりたいことが生まれてくることにも凄さを感じます。水垣さんの作られる飴釉や大鉢。実際に拝見できることを楽しみにしています。
水垣さんの言葉から溢れる作品に対する思いなどを知り、その上で改めて見ると時間を忘れるほど作品に惹きこまれていきました。意味を感じながらご覧いただくとまた違った世界が見えてきます。

染付の作品の他にも李朝の文様によくでてくるという牡丹の彫り模様の美しい陰刻6寸鉢や白磁の作品もご覧いただけます。
会期は、25日(月)まで。
今出合える水垣さんの作品をこの機会にどうぞ実際にご覧ください。
インタビューに丁寧に答えてくださった水垣さん、心躍るような時間をいただき本当にありがとうございました。

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7月16日より淀屋橋にて、水垣千悦展を開催いたします。
淀屋橋での開催は約5年ぶりです。
水垣さんは白磁、三島、染付などを作陶されています。
縁起物が好きだという水垣さんの染付は、愛らしい動物や植物など古事の物語を教えてくれているよう。
自然と笑みが溢れるユーモアある作品、今回はどんな染付が届くのか楽しみです。
ひとつひとつの表情をどうぞお楽しみください。


水垣千悦展
2022.7.16(土) - 25(月)
19日(火)はお休みです。
コホロ淀屋橋