陶器の器を買ったら最初にやるべきこと|
使い始めのお手入れと取扱い方法


陶器は「土もの」とも呼ばれ、自然の中で地面が水を吸い込むように、表面に細かい隙間があります。
そのため吸水性があり、
適切なお手入れをすることで、長く綺麗に使い続けられます。
使っていくうちに色や風合い、表情が変わる特徴があります。
土のもつ景色・貫入などの経年変化を楽しみ、お使いいただけたら幸いです。
今回は陶器についてのお手入れ方法を紹介します。




陶器の使い始め|最初のお手入れ


陶器は、まず初めに一晩から半日ほどぬるま湯に浸け、よく乾かしてからお使いください。
作家ものの器の場合、種類によって土の調合が違っていたり、自分で採取した素材を使う場合もあるため、使い手の私たちにとっては「陶器なのか磁器なのか」という判断はとても難しいことです。
また、陶器と磁器(陶石を材料として作られる器で、陶器に比べ吸水性がありません)のあいだに位置する「半磁器」や「半磁土」と呼ばれる土の調合度合い、釉薬など、細かく種類を分けると実にさまざまあります。一晩水に漬けるという方法は、これらどのような陶磁器に共通して使える一手間です。

粉引や化粧土を使った手法など、経年変化が大きい器には「目止め」(めどめ)と呼ばれる下処理が有効です。「目止め」とは、米のとぎ汁で器を煮る方法が一般的ですが、器の形状により小麦粉や片栗粉を使う方法もあります。


米のとぎ汁で煮沸する目止め方法

1、器が十分に浸る大きさの鍋に米の研ぎ汁を入れ、弱火にかける
※この時、火が器に近くならないように鍋底に網やお箸などクッション材になるものを入れる
※お皿が2枚の場合など、皿同士が重なると十分に目止めができない場合があるため、複数ある場合は個々の目止めがおすすめ

2、弱火で沸騰する手前に火を止め、2時間程度、研ぎ汁に浸った状態にする

3、器を水で洗い、十分に乾燥させる

「目止め」について、今回は最初のお手入れとして紹介していますが、たとえば「カップからじんわり水がにじむ」という場合の救済措置としても有効です。



陶器を使うたびの一手間がおすすめ

陶器の器を使う前には、毎回水にくぐらせて料理を盛ると、色移りや臭い移りがしにくくなります。
毎回水をくぐらせてから使うことで、器が潤って元気になるようなひと手間です。
とくに、珈琲やお茶など毎日使う器にはおすすめです。
お茶を淹れる前にカップをお湯で一度温めるとお茶が美味しくなるのをご存じですか?これは、器にも良い効果があるわけです。 

陶器を使ったあとはよく乾かしましょう

洗ったあとは布巾で水気を拭き取り、しっかり乾かしてから食器棚へ戻してください。表面だけを拭いてすぐに片付けてしまうと、中の水分が乾ききらず、カビの原因になることがあるためです。
自然乾燥が一般的ですが、乾燥機の使用も問題ありません。器の洗浄には柔らかいスポンジと中性洗剤をおすすめします。
また、長時間水につけたままにしたり、汁気のある料理を入れたままにすると、水分や汚れを吸収しすぎてしまうのでご注意ください。


使用の際に注意したいこと

直火や急冷は器に負担がかかり、割れる原因になります。
急激な温度変化にはご注意いただき、電子レンジのご使用は、器がもろくなる恐れがあるため、お控えいただくようにしています。
家庭用の食器洗浄機(乾燥機)は基本的に問題ありません。

どんなお手入れをしたら良いかわからない場合

ここまでは一般的な陶器の使い始めの方法から普段のお手入れまでを紹介しました。
ただし、特に作家ものと呼ばれる器の場合「陶器」「磁器」「半磁器」の違いがわかりにくいのが現状です。
また、最近では、お手入れを簡単にするための技術も増えており「米の研ぎ汁で煮る必要はない」器も多くなりました。

KOHOROでは作り手や器ごとに注意すべき点は購入時にご説明をお付けています。
購入してからしばらくたって扱いがわからなくなった器や、贈り物で仕様がわからない器などはお気軽にお問い合わせください。

特殊な仕上げの器について

生地は陶器でできていても、手法や仕上げにより、一般的なお手入れ方法に当てはまらないものを紹介します。

・絵付け(上絵)の器

器に模様を描く手法を「絵付け」と言いますが、「下絵」(したえ)と「上絵」(うわえ)に分かれ、下絵は素焼きした生地に絵を描いて、釉薬をかけてから高温で焼成します。一方で上絵は焼成後の器に絵を描いてから低温で定着させる手法です。
「下絵」に比べ「上絵」には釉薬がかかっていない分、目止めなどの下処理はしない方が良いというケースがあります。
また、食器洗浄機ではなく手洗いでさっと汚れを落とす手入れがおすすめです。
一般的に「上絵」に比べ「下絵」の方が、釉薬に挟まれている分、強い傾向があります。

・銀彩の器

純銀を釉薬とする仕上げ方法を「銀彩」と呼びます。
また、部分的な模様として、銀で描く絵付けも同じく銀彩と呼ばれることが一般的です。ちなみに金彩もあります。
銀の経年変化は通常の釉薬とは異なるため、酸化で黒く変化する傾向があります。
たとえば、お酢や卵などにより変色が早まることがあります。
銀彩の器には食器洗浄機を避け、手洗いでさっと汚れを落とす手入れがおすすめです。普段のお手入れについては、別途ご案内しております。

・耐熱鍋・耐火土瓶などの器

土鍋・土瓶・オーブンウェアなど、陶器で作られた調理器具の種類が増えています。
土ならではの食材への影響で、たとえば、じゃいもはホクホクに、お豆も美味しく煮えるなど美味しさに加え、調理自体の楽しみ方も豊富です。
耐熱・耐火の器は専用の土で作られています。
器が大きいものが多く、食器の目止めとは方法が異なるためご注意ください。お粥を炊くのが一般的です。
耐熱・耐火の器の最初のお手入れ、普段のお手入れについては、別途ご案内しております。

器の漂白について

陶器には細かい隙間があるため、漂白剤などの使用はおすすめできません。
茶渋や経年変化には「重曹」をおすすめしています。
重曹は色だけでなく臭いの除去にもおすすめです。
陶器の柔らかな印象は、土だからこそ生まれる雰囲気とも言えます。
その分、経年変化との付き合いとも切り離せず、変化を楽しみたい反面、どうしても元の色に戻したいという声も少なくありません。
たとえば、「会社の来客用に使いたい」「お店用でお客様にコーヒーをお出ししたい」という場合は、陶器ではなく磁器が使いやすく、また、陶器でも経年変化がわかりにくい器をおすすめします。どんなシーンで器を使いたいかにより、素材でご提案できることもありますので、お気軽にお問い合わせください。

陶磁器が欠けてしまった場合|金継ぎを承ります


どんなに丁寧に扱っていても、気付いたら器の縁が欠けていた、ヒビが入っていた…なんてことも。
KOHOROでは陶磁器の金継ぎのご提案も行っています。
現在、二子玉川では「金継ぎ受注会」として欠けや割れた器の金継ぎのお見積もりをする日を設けており、淀屋橋では「金継ぎ教室」を定期的に開催しています。
大切にお手入れをしていた器に修理が必要になってしまったら、お問い合わせください。