「新古写真館 フィルムで残す光の深度」- 暗室技師 勢井正一さんを訪ねて - 


6.28(土)・29(日)・30(月)にコホロ淀屋橋で開催する「新古写真館 フィルムで残す光の深度」。

中盤のフィルムカメラであるモノクロフィルムを使用した、写真家の辻本しんこさんによる撮影会を開催します。
現像・プリントは暗室技師である勢井正一さんの手仕事で仕上げられます。

写真からは、辻本さんが作りだすあたたかな空気感に緊張が解れ、自然な表情を引き出してくれている様子が伝わってきます。
お一人やパートナーと、ご家族や大切にしているペットと時間を共有しながら撮影したこと、その時の記憶に思いを馳せたり、みなさまの心に残る一枚になると嬉しいです。


撮影したモノクロの写真によく合うフレームも、いくつかご用意しています。
お二方が丁寧に向き合い生まれる写真は、そのときの思い出だけでなく、写真そのものに価値を感じ、記憶とともに一生大切にしたい宝物になるはずです。
ぜひこの機会に、未来への手紙となる記憶を、写真という形で残してみてはいかがでしょうか。

*撮影会は予約制となります。
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■暗室技師 勢井正一さんを訪ねて



今回、辻本さんが撮影したフィルムを現像・プリントされている、モノクロフィルム専門の暗室「スタジオファイブ」を訪ねました。
フィルムを作る会社が減って需要が減り、関西の暗室はスタジオファイブさんだけになりました。

デジタル写真が主流となった現代、フィルムという存在を知ってはいるものの、手作業でどのように現像・プリントされているかを知らないという方が大半だと思います。

写真にするためには、現像、プリントと大きく二つに分けた作業が必要です。
撮影したフィルムを薬品処理して、目で見えるネガフィルムにするのが「現像」。そのネガフィルムに光を当てて大きく映し出し、紙に焼き付けるのが「プリント」です。どちらの作業もたくさんの工程を経て完成します。

まずはフィルムの現像方法から。
写真では撮影用に電気を付けていますが、実際は暗闇の中で作業していきます。
暗さを体験させていただきましたが、目の前にある棚や人など姿形も全くわからない、何も見えない真っ暗な世界。

カメラを撮影した時に使用したフィルムをケースから取り出し、リールに巻き付けていきます。わずかでも手が滑るとフィルムに傷がついてしまい、撮った写真も全て消えてしまう、神経を使う工程です。



「五十年やっていても、今でもものすごい緊張するで。」
そう言いつつ、いとも簡単にリールに巻き付けていましたが、私たちがやってみると全くといっていいほどできませんでした。
これを何も見えない状況の中、感覚を頼りに巻いているとは驚きです。




リールにフィルムを巻き付け終わると、現像液・停止液・定着液につける工程がいくつも続き、最後に流水につけて洗い流して、乾かしていきます。
リールを巻くところからここまでの工程に約三、四時間ほどかかるのだそうです。






ここまでの工程を終えて、やっと次はプリントの作業に移ります。
プリントも現像と同様、暗い中で作業をしていきます。

フィルムから光を通過させて、レンズを通して印画紙に画像を映し出します。
このとき、写真の明るさ、陰影、コントラスト、トリミングをどのようにするかを決め、光を照射する長さをコントロールしていきます。





光を当てる時間を部分的に調整し、濃淡を作っていく「焼き込み」という作業ですが、左が初めに照射した写真、右が左の写真を見て調整した写真。光の当て方で、ここまで仕上がりに変化が生まれます。
勢井さんは「ネガを見たら光の当て具合がわかる」そう。秒数などではなく勘の世界というから驚きです。



印画紙に光を照射したら、暗室で現像の時と同様、現像液・停止液・定着液につけて、洗い流して乾燥させます。

なめらかな手付きで印画紙を現像液につけると、ゆっくりとフィルムに映った写真が浮かび上がり、記憶が蘇るような感動を覚えました。



五十年という長い年月、これまで現像・プリントを行ない続けた勢井さんの手は、その歴史が刻まれるかっこいい手をしていました。

KOHOROが掲げる「つくるをまもる」。
勢井さんの手仕事も、次の世代まで守っていきたいと思える素晴らしい出会いでした。


スタジオファイブInstagram:
studio5._monochrome

2025.6.28(土)・29(日)・30(月)
「新古写真館 フィルムで残す光の深度」
11:00-18:00
コホロ淀屋橋